人情を大切にする中国人が食事を割り勘しない理由

はじめまして、ちゃんこと申します。「中国でブルジョワ華人の妻してます」というブログで、香港生まれオーストラリア育ちの夫(チャンポン)との日常生活をつづっています。

彼の父親(パパ)は会社を経営する典型的な中国のお金持ち。私は日本の一般家庭で育ったので、結婚する前もいまも、2人の羽振りの良さに驚かされる毎日です。夫家族のお金に対する考え方はもちろんですが、中国で暮らしてみてビックリした文化が食事の会計の仕方でした。なんと、中国では食事の割り勘はしないんです!

今回は、食事は割り勘しない中国の伝統的な支払い文化を紹介します。

誕生日パーティーで感じたカルチャーショック

大学生の頃、北京に1年間留学したときのこと。中国人の友人に招かれ、誕生日パーティーに行きました。会場となったカラオケの大部屋には、プレゼントを持った友人が大勢集まり、私をパーティーに招待してくれた友人の誕生日をにぎやかにお祝いしました。

そして、パーティーが終わると参加者はそのまま解散。会費を集められなかったので不思議に思っていたのですが、聞けばパーティー開催費用は、誕生日だった本人が全額自己負担とのこと。なんと自分の誕生日パーティーは自分で主催するスタイルが中国では一般的だそうです。

日本で友人の誕生日を祝うとなると、誰かが企画して誕生日の人をお祝いすることが多かったので、この習慣には驚きました。

普段の食事も割り勘はしない

中国に留学していたころは誕生日パーティーに限らず、普段の何気ない食事でも、友達同士で割り勘したことはありませんでした。

留学当初、知り合ったばかりの中国人の友人と食事にいったとき、私が会計の半額を払おうとしても譲ってくれず、「もう友達なんだから!他人行儀にならなくていいよ」と言ってごちそうしてくれました。このとき、割り勘しない文化を知ったのですが、私は嬉しい気持ちもありつつ、友達だからこそ平等に割り勘するべきでは?とも思いました。

私は、日本だと親しい友人同士でも常にきっちり割り勘していたタイプです。割りきれない端数が出たときはわざわざジャンケンしてまで誰が払うか決めることもしばしば。金欠のときにジャンケンに負けて多めに支払うことになると、あからさまに悔しがるほど支払い金額を細かく気にしていました。そんなケチな私にとって、中国の友人が当然のように食事代おごってくれることは、とんでもなく衝撃的な出来事でした。

中国の伝統的な支払い文化「請客」

中国語で食事をごちそうすることを「請客」と言い、誰か一人が全員分の食事代を支払うのは中国伝統の文化なのです。割り勘しない理由は主に3つ考えられます。

理由1:食事をごちそうすることが「人間関係を続けていくための絆」になる

例えばAさんとBさんが食事をして、その日の会計は全額Aさんが負担する。
するとBさんは「では次回は私がごちそうします」という。
そしてAさんとBさんはその後もまた食事の約束をして友人関係を継続する。

つまり、どちらかが食事をごちそうすることが次も会う約束になるという発想なのです。もし「今日は割り勘にしましょう」と言うと、それは「今日が最後(次会うことはない)」という意味で受け取られることになります。(カップルが最後の別れ話をするときは割り勘になるとか)

複数人のグループで食事をするときも誰か一人が代表して全員分を支払います。その支払い担当は当番制。食事をするたびにグループ内で順番に支払えばみんな平等、という考え方です。

理由2:割り勘の計算が難しいケースが多い

中華料理はそのイメージ通り、円卓に並んだ大皿の料理をみんなで分け合うスタイル。誰が何をどれだけ食べたかわからず、それぞれ食べた分にあわせて支払い金額を決めるのが難しいので、誰かがまとめて支払うのが自然な流れになります。

また、食事の最後に誰がいくら支払うかお金の計算をすることは「楽しい雰囲気に水を差す」野暮な行為と捉える人もいるようです。

理由3、面子(メンツ)を保つため

中国人はとにかく面子(メンツ)を重んじます。おじさん世代の男性は特に「親分たるもの気前よくあるべき、太っ腹で大盤振る舞いするのがかっこいい」という考え方を持っています。

私の義理の父であるパパは典型的な中国のお金持ちで、香港へ旅行に来た私の両親をもてなす際、広東料理専門店でフカヒレやアワビなど高級食材をふんだんに使った料理を注文し、総額約50万円のランチをごちそうしてくれました。また、日本の取引先を現地でもてなすとき、中国の専任料理人をわざわざ来日させて料理をふるまうこともあります。

そんなパパのような豪快さは、中国で人望と信頼を集めるには必要不可欠な要素なんだろうと思います。

基本的には「ホストがゲストをもてなす」という発想

中国人と食事をする際の「今日は誰が食事代を支払うべきか?」という問題については、主に3つの法則に当てはめて考えると分かりやすいです。

法則1:上下関係で決める

上司と部下、先輩と後輩、年上と年下、など上下関係がある場合は上の人が下の人にご馳走するのが一般的です。上の人には上の人のメンツがあるため、よっぽどの個別の事情が無い限り、この法則が崩れることはありません。

法則2:遠方から来た人にごちそうする

例えばオーストラリア在住の夫の友人が中国・福建まで遊びに来てくれた場合、夫はなにがなんでも友人にごちそうします。なんなら食事代だけでなく滞在するホテルまで手配します。とことんおもてなしすることで「遠方からはるばる会いに来てくれてありがとう」という気持ち表現しているのです。

法則3:誘った方がごちそうする

食事に誘った側が「今日はありがとう」の気持ちを込めてごちそうすることが多いです。誕生日パーティーを本人が主催するのもこの理由から。そして、食事に誘われておごってもらった方が次回は誘う側に周ることで友好関係深めていきます。ちなみにデートの場合は男性が女性におごることが大半です。

もし、お互い初対面、上下関係がはっきりしない、仕事の取引関係でもない、移動距離もほぼ同じ……などの微妙なケースは、とりあえず自分が支払うのが無難です。その場合、当然相手側も同じように自分が支払いたいと考えているため、会計時に押し問答が発生します。

支払い時の押し問答は様式美

「今日は僕が払うよ」
「いやいや、ここは俺が払う、せっかく上海まで来てくれたんだから」
「いやいや、誘ったのは僕だから!」
「いやいやいや!」
「いやいやいやいや!!」

というように、特に上下関係もない友人同士の場合、食事のたびにこういう押し問答を4~5回繰り返しています。法則上、たとえおごられる側だとしても全力で伝票をもぎ取ろうとするため、ちょっとしたもみ合いになることもあります(笑)

夫はこうした押し問答を避けるため、トイレに行くふりしてこっそり支払いを済ませようとするのですが、夫のことを良く知る人ほどその手口を見抜くのがうまく、結局は押し問答に。このおなじみの光景は、もはや様式美です。

若者同士は割り勘することもある

中国でも、若い世代では食事の支払いを割り勘することもあるそうです。中国語で割り勘は「AA制」と言います。AAの由来は、Algebraic Average(代数平均)、All Average(全員平均)、Acting Appointment(約束の履行)、All Apart(すべて分ける)など諸説あり、近年は支払い金額に傾斜をつける「AB制」という新語も出てきているようです。

しかし、食事の会計時に「今日はAA制にしましょう」と提案するのは避けるのが無難です。割り勘を提案されると、「ケチな人だ」とか「最後にお金の計算をするなんて楽しい気分が台無しだ」とか快く思われない可能性はまだまだ高いです。食事の相手が初対面であったり、これから関係を築きたい人であったりする場合は特に要注意が必要です。

まとめ

中国には、食事代を割り勘しないことで人間関係を円滑にする伝統的な文化があります。

ケチな私は当初、自分がおごってもらうお店と自分が支払うお店で料理の相場が違うと、お互いの支払い金額に差が出てしまい、不公平な気がしていました。しかし、慣れてくると、そんな細かいお金の計算は気にならなくなるものです。むしろ、自分がおごってもらう時は嬉しいし、相手におごってあげる時は気持ちいいので、お互いハッピーな気分になれるステキな習慣だと思っています。


プロフィール


ちゃんこ
金持ち華人の家に嫁いで専業主婦になった純日本人です。絵日記ブログ「中国でブルジョワ華人の妻してます」を運営中。中国茶が好きです。

 
 
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Twitter:@CPchanko